最近electribe2にちょい足しでより音楽的に、より発展したサウンドスケープをつくれるものを探していると、Korg NTS-1にたどり着いた。
安価で手にしやすく、音色も大人気。販売終了した現在も、批判レビューよりも好意的なレビューが多いように見られ、有志によるYoutubeの作品づくりも盛んである。2020年に発売されたNTS-1はそれまでのKorgのvolcaなどで培ったノウハウをふんだんに使いシンプルかつ楽しめるように発売されたものだ。
一方、2014年にその当時では十分な機能を搭載したelectribe2であるが、それまでのElectribeの輝かしさと比べるとユーザーの「痒いところに手が届く」感は薄かったともいえる。
乱暴に言えばアルペジエイター以外はElectribe2でも作れる音色が多いのに、なぜNTS-1の方が好まれるのか。時代も違うし設計も何もかも違えど、NTS-1の上位互換になりきれないElectribe2を僕だけはまだまだ救いたいので、AIと会話しつつ理解を深めてみた。
今回はDeepSeekを使用して会話した。Electribe2の仕様などについてはめちゃくちゃだったが、おおよそ回答にはしっくりくるところもあった。
質問1 NTS-1とElectribe2はどう違うか
私質問
nts-1はelectribe2よりもまだまだもりあがってる気がする。確かに音に魅力あるとかんじるけど、アルペジエイター以外のシンセの基本機能はelectribe2にもまったくおなじものが搭載されてる気がする。やっぱり、それでもツマミや構成がシンプルな分、工場出荷時の値(フィルターのかかり具合なども)がelectribeよりよくて、音がいいと感じるのか。それとも、electribeが多機能なゆえにスイートスポットの音を探すのが難しいのか
DeepSeek回答
あなたがNTS-1とElectribe 2の音質の違いを感じる背景には、「設計思想の根本的な差」と「ユーザーインターフェースの心理効果」が複雑に絡んでいるようです。深掘りしてみましょう。
1. 【機材の「音の哲学」の違い】
NTS-1が「良い音」に感じられる理由
- 「制限された自由度」のメリット
NTS-1はオシレーター・フィルター・エフェクトのパラメータ数がElectribeより少ないため、「設計者が意図した音のスイートスポット」に自然と収束しやすい。例えば:- フィルターのレゾナンスが「壊れそうで壊れない」ように調整済み
- デジタルオシレーターの量子化誤差を「味」として計算済み
- アナログ回路の擬似再現
NTS-1のプロジー・フィルターは「KORG monologueの回路をデジタルエミュレーション」しており、Electribeの汎用フィルターより「意図的な非線形性」が埋め込まれている。
Electribe 2が「スイートスポットを見失う」理由
- パラメータ過多の逆説
例えばフィルター単体でも「TYPE(LP/HP/BP)、CUTOFF、RESONANCE、EG AMOUNT、KEY TRACK」の5要素が相互干渉。「良い組み合わせ」が確率的に希薄化。 - グローバルエフェクトの影響
マスターバスに必ずかかるエフェクト(特にデジタルコーラス)が、素の音を意図せず「濁らせる」傾向。
2. 【UI/UXの心理学的効果】
NTS-1の「ツマミの嘘」
- 「直感的に触れる重要パラメータだけ」の配置:
TIME/DEPTHのツマミが「人間が最も敏感に感知する範囲(例:ディレイのフィードバック0.3~0.7)」に最適化されている。 - 物理ツマミのアナログ感:
デジタル制御ながらツマミの回転角と音変化の関係が指数的カーブで設計され、「触って気持ちいい」よう調整済み。
Electribe 2の「メニュー地獄」
- パラメータ探検コスト:
「フィルターのキートラック量」を変更するには、[EDIT]→[PART PARAM]→[KEY TRACK]と3層操作が必要。探索意欲を削ぐUX。 - デジタルディテールの欠如:
同じ「ローパスフィルター」でも、NTS-1はカットオフ変更時の位相のズレまで計算された音作り。Electribeは機能の「チェックボックス化」。
3. 【実証実験:NTS-1の音の再現性】
Electribe 2でNTS-1の音を再現する試み:
1. オシレーター設定: - Waveform:Saw → 同じものを選択 - 但しElectribeは「WIDTH」パラメータが初期値50%のため倍音構成が異なる 2. フィルター比較: - NTS-1:カットオフ@65% → 心地よい歪み発生 - Electribe:同値設定でもクリーンすぎる → Driveを+30%必要 3. エフェクト真価: - NTS-1のディレイは「ビットクラッシュ」が暗黙的にかかる - Electribeで再現するには別途デストーションが必要
4. 【戦略的活用法】
NTS-1を「Electribeの音質補正器」として使う
- エフェクトルーティング例:
Electribe Audio Out → NTS-1 Input → NTS-1のプロジーフィルター(Cutoff: 70%, Res: 30%)→ ディレイ(Mode: Tape)
→ Electribeの平坦な音に「奥行き」を追加 - シンセエンジンの役割分担:
- Electribe:リズムループ・複雑なシーケンス
- NTS-1:メロディー/ベース(単音だが音質勝負)
5. 【最終結論】
あなたの感覚は正しく、NTS-1の音が優れて感じられる主因は:
- 「少ないパラメータで深い最適化」されたDSPアルゴリズム
- 「触覚と聴覚の整合性」を追求したUI設計
- 「意図的な劣化要素」の計画的挿入
Electribe 2で同様のクオリティを出すには:
- 「WIDTH=100%, DRIVE=ON, FILTER KEY TRACK=OFF」など初期値を大胆変更
- 外部エフェクトで「人為的劣化」を加える(例:サチュレーター前置き)
この音質の差は、「楽器としての完成度」 vs 「機能の網羅性」のトレードオフと言えるでしょう。NTS-1の「音の魔法」をElectribe環境に移植するには、意識的に「制限」を課す必要があるのです。
ユーザー側の選択肢が多いことの功罪
言っておくがDeepSeekの回答のうち、Electribeの仕様に関する部分は読み飛ばしていただいきたい。
とはいえ言いたいことはよくわかる。
やはりNTS-1は最初からある程度気持ちよい音になるために、かなり調整が重ねられていると感じる。ただただ網羅的に、ロジカルに0-100の機能を搭載しているだけでは最もおいしいと感じる音を狙うのは難しいのだ。
質問 それでもelectribe2だけで作成したとしていいものが作れるか
DeepSeek回答
結論から言えば「Electribe 2単体でも十分に良い作品は作れる」のですが、そのためには「機材の制限を逆手に取る戦略」が必要です。
Electribe 2の「多機能だがスイートスポットが埋もれがち」という特性を、「創作の制約として活用する」ことで、むしろNTS-1などでは出せない独自の表現が可能になります。
1. Electribe 2単体で「良い音」を作るための具体的手法
【音作りのコツ:NTS-1的な「スイートスポット」を強制的に作る】
- ▶ フィルターの「隠れパラメータ」を活用
IFX Type 24(AUTO WAH)
をフィルター代わりに使用 → 「Resonance」を上げるとNTS-1風の鋭い鳴りに近づくFILTER EG AMOUNT
をマイナス値に → アタック時にカットオフが下がり、モジュラーシンセ的なニュアンスが出る
- ▶ オシレーターの「WIDTH」で音の太さを調整
- 初期値の
50%
では薄いので、100%
に設定 → 倍音成分が増え、NTS-1に近い迫力が出る WAVE SHAPING
(OSC MODE)を「+1」や「+2」に → アナログシンセ的な歪みを追加
- 初期値の
- ▶ エフェクトの「意図的な過負荷」で質感を変える
MASTER COMPRESSOR
を強めにかけ、DRIVE
をON → 音圧と歪みが増し、NTS-1のようなアグレッシブなサウンドにDELAY
やREVERB
のTIME
を最大にし、FEEDBACK
を調整 → グラニュラー的な残響を作れる
【シーケンスのコツ:Electribeの「ループ制約」を逆に活かす】
- ▶ ステップレコーディングの「確率的利用」
STEP REC
モードで、意図的にランダムなノートを入力 → 偶発的なフレーズが生まれるMOTION RECORD
でフィルターやエフェクトを微細に制御 → ライブ感のある変化を追加
- ▶ パートごとの「ロール/スライド」機能でリズムに変化
ROLL
(ストラム)機能で16分音符を高速繰り返し → グリッチ的な効果SLIDE
(ポルタメント)をかけることで、シンセベースにモジュラー的な滑らかさを追加
2. Electribe 2単体の「限界」をクリエイティブに回避する方法
【DAW連携で「グラニュラー/グリッチ」を追加】
- ▶ Reaper/Abletonで後処理
- Electribeの音を録音し、
Glitchmachines Fracture
やPortal
でグラニュラー処理 → 単体では難しい粒子感を追加 Bitcrusher
やSample Rate Reduction
でローファイ化 → NTS-1風のデジタル歪みを再現
- Electribeの音を録音し、
【外部エフェクトなしで「変態サウンド」を作る】
- ▶ オーディオインを使ったフィードバック
AUDIO IN
に出力を戻し、DELAY
やFILTER
で自己共鳴を発生 → モジュラーシンセ的なカオスサウンドが作れる - ▶ リサンプリング(録音→再編集)
一度レンダリングした音を再度Electribeに投入し、TIME STRETCH
やREVERSE
で加工 → 新しいテクスチャを生成
3. 実際の作例:Electribe 2単体でどこまでできるか?
- ▶ アンビエント/ドローン系
PAD
パートでロングサステイン +FILTER EG
でゆっくり変化 → リッチな空間構築可能REVERB
を最大にし、DELAY
でループ的持続 → NTS-1のAmbient Φに近い雰囲気
- ▶ グリッチ/IDM系
STEP JUMP
やMUTE GROUP
でリズムを不規則に切断 → Autechre的なグルーヴOSC SYNC
をONにし、ピッチを急変させてデジタルノイズを生成
最終結論:Electribe 2単体でも「良い作品」は作れるが…
- ✅ 向いている表現
- ループベースのテクノ/ハウス
- シーケンシャルなIDM/グリッチ
- フィルター&エフェクトを駆使したアンビエント
- ❌ 難しい表現(外部機材推奨)
- 超高解像度なグラニュラーサウンド(→ Texture Labが向く)
- 完全なフリーキーなモジュラー的変化(→ Volca ModularやKastleが必要)
- 複雑なポリフォニックアレンジ(→ DAWやOP-Zが有利)
得意不得意を見極める
とりあえずいろんな機能がのっているから万能とみられがちだが、確かに現在もユーザーによって作成されているものは上記のようなテクノもしくはアンビエント、またはElectribe2の標準機能で作りやすい16パートのシンセをつかったポリリズミックなアプローチなどが多そうだ。
また、最終段でDAWにいれることでコンプ感を調整したりシマ―リバーブなどで変化させているのも多い。Electribe2の弱点に合わせておいしい奏法が変わっていったと思われる。
そして今NTS-1をぽちりました。